Thielska Galleriet

今回ストックホルムを訪れたもう一つの大きな目的。それは、ティールスカ・ギャレリエ(Thielska Galleriet)を訪れることだった。 裕福な銀行家であり熱心な美術コレクター/芸術支援者でもあったエルネスト・ティール氏(Ernest Thiel, 1859-1947)の元邸宅。ここは、19世紀後半~20世紀初頭の北欧美術の宝庫で、例えばあのエドヴァルド・ムンクの作品に関しても、彼の母国ノルウェー以外では世界最大のコレクションを所蔵している。 ユールゴーデン島(Djurgården)の東の尖端にひっそりと佇むこの美術館は、私の大好きな画家たちの作品に溢れた、まるで夢のように美しい場所だった。窓から差し込む優しい光と、壁一面に飾られた数々の名画たち。瀟洒な建物と、緑豊かな庭に満ちる心地よい静寂。窓の向こうには、広い空と海に浮かぶ島々が広がっている。そんな素晴らしい環境の中で、静かに作品と向き合い、言葉では表しきれないほどの至福を味わった。 0:00 /0:17 1×…

Eugène Janssonについて

エウヒェン・ヤンソン(Eugène Jansson, 1862–1915)は、19世紀末から20世紀初頭のスウェーデンを代表する画家の一人だ。 彼は14歳の時に猩紅熱に罹患し、その後一生涯、視力や聴力の低下、慢性腎臓病などの後遺症を抱えることになった。また、若くして父親を亡くし、一家の家計を支える重責を負うこととなる。当時、北欧の画学生たちの多くが芸術の都パリへ留学する中、彼は貧困と病弱さゆえにストックホルムを離れることができなかった。 ヤンソンは、当時ストックホルムの中では貧しい地域の一つだったセーデルマルム地区(Södermalm)に暮らし、その高台から見下ろす夕暮れや夜明け前の風景を深い青のグラデーションで描き続けた。そうしてやがて彼は「青の画家(Blåmålaren)」と呼ばれるようになる。 1886年、保守的で古い体制だったスウェーデン王立美術アカデミーに対抗し、若い改革派の芸術家たちが反対運動を起こし、「Konstnärsförbundet」という芸術家協会を設立した。ヤンソンも創立メンバーであり、さらには運営委員も務めた。同じく協会の創立メンバーであり、ヤンソンの親…

Eugène Janssonを追って

今日は、エウヒェン・ヤンソン(Eugène Jansson, 1862-1915)が暮らしていたアパートがあるセーデルマルム(Södermalm)に出向いて、彼が繰り返し眺め、描いた、リッダーフィヤルデン(Riddarfjärden)越しの風景をこの目で見てきた。 そして、その足でフェリーとバスを乗り継ぎ、ティールスカ・ギャレリエ(Thielska Galleriet)へ。この美術館は、彼の作品を国内最大規模で所蔵している。エウヒェン・ヤンソンは、夕暮れや夜明け前のストックホルムの風景を青のグラデーションで描いた「青の時代」の作品群で知られ、「青の画家(blåmålaren)」とも呼ばれる。ついさっき目の当たりにしたリッダーフィヤルデン越しの眺めを描いた作品を前に、彼と同じ場所に身を置いた実感をしみじみと味わった。…

美しく、素敵なところ

ヴァルデマーシュウッデ(Waldemarsudde)は、エウヒェン王子(Prince Eugen, Duke of Närke)の作品をはじめとする数々の芸術作品はもちろんのこと、建物も、庭も、眺めも、周囲の環境も、すべてが美しいところだった。燦燦と降り注ぐ光の中、きれいに整えられた庭を歩きながら、「王子、いいところで暮らしていらっしゃったんですね」と思わず心の中で語りかけてしまった。 周辺では、たくさんのカオジロガンの幼鳥たちが「ひよひよ」と可愛い声で鳴きながら、親鳥の後について草を啄んでいた。中には何か勘違いをしたのか、嘴に草を挟んだまま私にむかってトコトコと突進してきた幼鳥もいた。 0:00 /0:16 1×…

Prinsens kök

ヴァルデマーシュウッデ(Waldemarsudde)には、エウヒェン王子(Prince Eugen, Duke of Närke)の食事が調理されていた厨房も残されていて、現在は「プリンスのキッチン(Prinsens kök)」というカフェ&レストランになっている。ここで食べたランチは、ストックホルム滞在中に食べた中でも特に美味しいひと皿だった。…

Prins Eugen av Sverige

今回ストックホルムに到着してすぐ、ネルケ公爵エウヒェン王子(Prince Eugen, Duke of Närke)が若い頃にアトリエを構えていたという建物の前を偶然通りがかった。私は彼が描いた雲の作品が大好きで、彼の邸宅跡であるヴァルデマーシュウッデ(Waldemarsudde)は、今回ストックホルムを訪れた目的の一つだった。そこで、王子について改めて調べてみた。 「絵を描く芸術の王子」として知られるエウヒェン王子は、王族の趣味として絵を描いたのではなく、若い頃には芸術の都パリで本格的に美術を学び、生涯を通じて一人の芸術家として生きることを志し続けた人だった。彼は、優れた風景画家として活躍する傍ら、同時代の芸術家たちを支える強力なパトロンとしても貢献し、精神的にも経済的にも当時のスウェーデン芸術界を大きく牽引した。さらには、当時は冷遇されていた女性画家たちの作品をいち早く評価・購入し、その地位向上と活躍の場を広げるために尽力した。 また、彼のリベラルで先進的な精神は、第二次世界大戦中にも揺らぐことはなかった。反ナチスの抗議活動を公然と支援し、ナチスの手を逃れてきた芸術家たちを…

Waldemarsudde

今日は、ストックホルムを訪れた目的の一つである、「絵を描く王子/芸術の王子」と呼ばれるネルケ公爵エウヒェン王子(Prince Eugen, Duke of Närke)の邸宅跡「ヴァルデマーシュウッデ(Waldemarsudde)」を訪れた。 ヴァルデマーシュウッデは、展示されている作品も、邸宅跡も、周辺の環境も、すべてが実に美しい夢のようなところだった。一度は観たかった作品群にようやく出逢えただけでなく、親切なスタッフから一時間近くも色々なことを教えてもらい、実に贅沢な時間を過ごした。 この美術館は、エウヒェン王子の元邸宅と、後に新設されたギャラリー棟に分かれている。元邸宅は3階建てで、1階には当時のインテリアや家具が展示され、2階では、ギャラリー棟の特別展示「In Bloom – Art & Botany」に合わせたのか、王子や当時王子と交流のあった画家たちが描いた花と植物の作品が展示されていた。 3階へと続く階段を昇ると、回廊にいよいよ私が見たかった王子の風景画作品が現れた。3階にある一番広い部屋は、王子のアトリエだったそうだ。大きな窓から優しい光が降り注ぐこの部屋には、王…

ストックホルム散策

今日は美術館がすべて休館日だったため、最初からのんびり過ごすつもりだった。昼近くまで眠って移動の疲れを癒した後、ゆっくりとホテルを出て、フムレゴーデン(Humlegården)公園の向かいに建つ、かつてアクセル・ファールクランツ(Axel Fahlcrantz)ゆかりのサロンがあったという建物までのんびり歩いた。 ストックホルムの中心部にありながら、フムレゴーデン公園は緑に溢れていて、静かで実に居心地のいい場所だった。ファールクランツもこの公園を歩き、木々を見上げ、光や空の変化を眺めたのだろうかと想像しながら歩くのは愉快だった。 たくさんの大きな木々が立ち並ぶ中、特別にいい感じの木を見つけて近づいたところ、傍にもう一人、その木の写真を撮っている女性がいて、言葉は交わさずとも、束の間の共振を味わった。…