今回ストックホルムに到着してすぐ、ネルケ公爵エウヒェン王子(Prince Eugen, Duke of Närke)が若い頃にアトリエを構えていたという建物の前を偶然通りがかった。私は彼が描いた雲の作品が大好きで、彼の邸宅跡であるヴァルデマーシュウッデ(Waldemarsudde)は、今回ストックホルムを訪れた目的の一つだった。そこで、王子について改めて調べてみた。

「絵を描く芸術の王子」として知られるエウヒェン王子は、王族の趣味として絵を描いたのではなく、若い頃には芸術の都パリで本格的に美術を学び、生涯を通じて一人の芸術家として生きることを志し続けた人だった。彼は、優れた風景画家として活躍する傍ら、同時代の芸術家たちを支える強力なパトロンとしても貢献し、精神的にも経済的にも当時のスウェーデン芸術界を大きく牽引した。さらには、当時は冷遇されていた女性画家たちの作品をいち早く評価・購入し、その地位向上と活躍の場を広げるために尽力した。

また、彼のリベラルで先進的な精神は、第二次世界大戦中にも揺らぐことはなかった。反ナチスの抗議活動を公然と支援し、ナチスの手を逃れてきた芸術家たちを保護するなど、自らの社会的立場を賭して正義を貫いたという。

王族という身分を超えて、芸術と自由、そして人道主義に生涯を捧げたエウヒェン王子。知れば知るほど、その多彩な活躍と真っ直ぐな人物像に強く惹きつけられる。

エウヒェン王子、今回私はストックホルムで、あなたの素晴らしい作品を間近に観ることができただけでなく、あなたの面影と美学に触れ、あなたの意志が確かに今も生きているのを確認しました。お逢いできてとても嬉しいです。そして、必ずまた会いに来ます。