Ivaloにて

ウツヨキからバスに揺られて3時間弱ほど(途中イナリで予約なしに乗車する人たちがいて予定より停車時間が長引いた)で、イヴァロの町に到着した。夏至(休日)の翌日とあって、週末を北で過ごした人たちが街へ戻っていくのか、バスには思いのほか多くの乗客がいた。中にはウツヨキでキャンプをしていたというカップルもいた。 イヴァロは人口約3,000人ほどの小さな町ではあるが、大きなスーパーマーケットが2軒あり、医療センターもあるそうで、暮らしやすそうなところだと思った。もちろん、町のなかを歩いているトナカイも見かけたし、サーミランドの日常ともいえるトナカイによる交通渋滞も起きていた。 0:00 /0:10 1× この一週間でいったい何km歩いたのだろう。ほぼ毎日どこかの山を歩いていた。日によっては複数の山を登りもした。さすがに肉体疲労を感じていて、足には靴擦れと痣ができている。しかし、日が沈まないので夜も昼間のように明るいここでは時間の感覚が狂いがちで、ついつい夜遅くまでで歩いてしまい、睡眠不足に陥ってしまう。…

トナカイたちに見送られて

ウツヨキを発つ日の朝、ホテルの目の前で2頭の雄トナカイに遭遇した。彼らはおそらく観光用に村の図書館で飼育されているという“村トナカイ”だろう。人に慣れているとはいえ、トナカイは突然の動きを怖がると聞いていたので、ゆっくり近づいてちょっと話しかけてみたりした。 0:00 /0:20 1× 私が「バイバーイ」などと声をかけ続けていたからか、彼らは姿が見えなくなるまでずっと見送ってくれた。バイバイ、どうか元気でね。必ずまた来るよ。…

Hotel Utsjoki

ウツヨキでは、ウツヨキとイナリなど南の方の町を結ぶ道路が開通した翌年の1959年に建てられたというHotel Utsjokiに滞在した。開業当時からあまり変わっていないのではと思うほど懐かしい雰囲気のホテルで、予約時点では少しだけ不安も抱いていたけれど、スタッフはみな明るく親切で、客室はシンプルながらも必要なものは揃っていたし、小さなラウンジにはコーヒーメーカーやポットや電子レンジもあって、思っていた以上に快適に過ごすことができた。 ホテルの廊下には、サーミの太鼓(シャーマン・ドラム)に刻まれるさまざまなシンボルが描かれた絵が飾られていた。また、部屋の各ドアにもそれぞれ異なるシンボルが描かれた小さな絵が掲げられていた。私が滞在した部屋のシンボルは舟だった。 このホテルは、村の数少ないレストランも兼ねていて、ウツヨキ川を眺めながら食べた食事はどれも美味しかった。また、夏至の前夜には、地下にあるバーでイベントが開催され、地元の人たちがたくさん集まっていた。夏至の日(祝日)と、その翌日の日曜日は、ホテルも休業日でスタッフはいなかったけれど、朝食はちゃんと事前に用意されていたし、何かあれば…

風の声、木々の声、大地の声

イナリでは、夜のJuutua川沿いを一人で歩いていた時に、ふと風と木が語り掛けているように感じて、私も語りかけた。そうして、しばし静かなやり取りを繰り返した。 ウツヨキでも、風や木々や大地が語りかけてくるような感覚を何度も味わった。ある夜、岩場の多い急斜面を登っていると、突然空の様子が変化し、風が変わり、木々が何かを訴えているように感じた。私は、今はこれ以上登るなと言われているような気がして立ち止まり、山を下った。 圧倒的な自然と静寂の中にひとりでいると、こうした感覚が研ぎ澄まされていく/戻ってくるのだろう。この感覚はどの山を歩いていても常にあって、自然との一体感のようなものを味わうと同時に、自分自身に還る感覚を体験し続けていた。それは、とても静かで自然なものだった。…

Áilegas

夏至の日の夜20時半を過ぎてから、一人でウツヨキのAiligas/Áilegasに登った。 登りはじめてすぐ、一頭のトナカイに遭遇した。程よい距離があったので、トナカイは逃げることはなかった。怖がらせないようなるべくゆっくり動いて、しばらくじっと静かに観察した。この時期に角があるということはおそらく雄トナカイで、もしかしたらKaldoaivi原生地域で放牧されている個体だったのかもしれない。 0:00 /0:33 1× 標高342mのAiligasも、上の方にはツンドラ地帯が広がっていて、ところどころに雪も残っていた。 遠くノルウェー方面の山はまだ雪に覆われていて白い。夜の太陽は雲に隠れていたが、それでもなお壮観な眺めだった。 おそらく天敵に襲われたのだと思われるトナカイの亡骸も目にした。この辺りでは、ウルヴァリンがトナカイを狩るらしい。主に狩られるのは、人間側の都合や勝手(経費や労力の削減、観光目的による管理等)によって本能や運動能力の発達を妨げられた“弱い”個体なのだと教えてもらった。…

Paistunturin erämaaへ

夏至の日には、トナカイ飼いでもあるTravel UtsjokiのPetraさんに案内してもらって、Paistunturi原生保護区(Paistunturin erämaa/Báišduoddara meahcceguovlu)の北東の端あたりの標識のないルートを歩いた。 4~5時間のハイキング中には、思っていた以上にたくさんのトナカイ(それも 5月に生まれたばかりの子トナカイと母親たち!)を目撃した。 0:00 /0:13 1× 今はちょうど、5月にKevo自然保護区(Kevon luonnonpuisto/Geavu luonddumeahcci)で子を産んだトナカイたちが、Paistunturiに戻ってくる時期らしい。子を連れた母トナカイたちは特に警戒心が強く、人間の存在を察知すると興味は示すものの、素早く離れていく。 0:00 /0:15 1× 0:00 /0:…

Kokkoを見にふたたびMantojärviへ

Travel UtsjokiのPetraさんには、私の身長にあうレンタルバイクの手配までしてもらった。夕食後、Mantojärviまでサイクリングに出かけることにした。 Utsjoki/Ohcejohka。何もかもが雄大なところ。そして、静かだ。 しかし、それにしても寒い。明日は夏至。…