犬との暮らし

日本で再会した何人かの友人たちから、さくらをチェコへ移住させたのはわたしの人生の中でも最大そして最善の決断だったのではないかと言われた。確かにわたし自身も、さくらをチェコに連れてきて本当に良かったと常に思っている。さくらは日本にいた頃よりもずっと健康的で生き生きとしている。さくらにとっても、わたしにとっても、本当に良い決断だった。 わたしがチェコに移住する前、日本で彼らと交流していた頃には、わたしの傍にも彼らの元にも犬はいなかった。それが今ではみな犬と共に暮らしていて、犬との生活がいかに自分たちに大きな変化をもたらしたかという話が尽きなかった。ヘルシンキ行の機内で隣り合わせた人とも、犬に纏わる話題で意気投合し、犬との生活が与えてくれた変化について語り合った。…

旅はいつも

日本に着いてすぐ、わたしが到着する直前に大雨が降って気温が少し下がったと聞いた。その後の日本滞在中は確かに暑さもそこまで厳しくはなく、終始無理なく過ごせたし、雨もうまく避けられていた。おかげで、旅も存分に楽しめたし、テラス席での会合や飲食も快適だった。冗談半分に「わたしが日本を離れたらまた酷暑が戻ってくるかもね」などと言っていたが、どうやら本当にまた日本はかなり暑くなっているようで驚いた。 以前から、日本へ行くタイミングには自分の意図だけではない何かが働いている気がしている。実際に、数年前にはまるで図ったかのように祖母の死に間に合ったし、コロナ禍の最中にも無事に帰国して母の最期を看取ることもできた。 今回の一時帰国もやはり終始最適な時に運ばれていたように感じる。きっと次回もまたそうなるだろう。そもそもあらゆる旅と移動には、そうした個の意図を超える流れのようなものが働いている感がある。…

旅人、マレビト

今回の日本滞在、日本の旅は、とても充実したいい時間だった。会いたかった人たちに会えたし、思わぬ嬉しい交流もあった。美しい眺めにいくつも出逢い、数々の美味しいものを食べ、気に入るものや場所もたくさん見つかった。終始天気にも恵まれて、すべてのタイミングが完璧だった。 今回の旅で実感したのは、わたしはあらゆる意味で旅人なのだということだった。そして、わたしはわたしが会った人々にとってある種のマレビトであり、種を運ぶ者なのだと感じた。 旅人として眺めると、日本は本当にいいところだった。美味しいもの、すてきなものがふんだんにあり、美しい風景と独特な眺めに溢れている。何度か書いたように、まるで映画やアニメ、ゲームの世界に入りこんだかのような気分になることがよくあった。あの非日常的なフィクション感は、日本だからこそ味わえるおもしろさだろう。…

ただいま、さくら

羽田を発ってから約32時間を経てようやく自宅に到着。なかなかの長旅。さすがにくたびれた。 さくらが駅まで迎えにきてくれた。ただいま、帰ってきたよ。…

チェコへの帰路は

JALのプレミアムエコノミーを初めて利用してみたところ、あまりの快適さにすっかり熟睡。日本滞在中の疲労が蓄積している中での14時間40分という長時間フライト、エコノミー席は満席で、さらにその後11時間の乗り継ぎ待ちもあったので、チェックイン時に思い切って奮発してみた。結果は大満足。さらに思いがけない楽しい出会いもあった。 そもそも元の予約はヒースロー経由(最も避けたかったがそれしか無かった)だったのが、ブリティッシュ・エアウェイズによってフライトがキャンセルされたため、変更可能な選択肢の中からヘルシンキ経由を選んだのだった。結果的にはすべてより快適になっている。…

会うべき人に会い、死者と再会する旅

何を話したか、何をしたかは重要ではなく、会うべき人とは会うことになり、そうするとそこにただいるだけで共振は起きる。それだけで十分で完全だった。 今回の日本滞在は、死者と再会する機会でもあった。肉体を離れていった人たちがこの世界に確かに存在していたことを思い出し、そして、彼らのエッセンスは今もこの世界をめぐり続けていることを確認した。それは、風であり、波であり、光だった。…

夢中人

だんだんと日が暮れて、空が珊瑚色に染まったあと、世界がゆっくりと深い藍色に包まれていった。心地よい風が通り抜けて、たくさんの光がちらちらと揺れていた。 今回の日本滞在最後の夜は心がじんわり溶けていくような優しい時間となった。ホテルに辿り着いてから振り返ると、思わず涙ぐんでしまいそうになるほどいい時間だった。まるでずっと昔にどこかで共にいたのではとすら感じる人との、新しくも懐かしい出会い、そして共振。この時、眺め、感覚を、いつか思い出す日が来るだろう。 ずっとずっと夢を見ているようだ。そう感じられるほどすべてが静かで美しかった。生きながら瞬間ごとに死んでいると感じ、こちらとあちらは違うようで同じだった。形あるもの、形なきもの。やっぱりきっとすべてが夢なんだろう。…