風の声、木々の声、大地の声

イナリでは、夜のJuutua川沿いを一人で歩いていた時に、ふと風と木が語り掛けているように感じて、私も語りかけた。そうして、しばし静かなやり取りを繰り返した。 ウツヨキでも、風や木々や大地が語りかけてくるような感覚を何度も味わった。ある夜、岩場の多い急斜面を登っていると、突然空の様子が変化し、風が変わり、木々が何かを訴えているように感じた。私は、今はこれ以上登るなと言われているような気がして立ち止まり、山を下った。 圧倒的な自然と静寂の中にひとりでいると、こうした感覚が研ぎ澄まされていく/戻ってくるのだろう。この感覚はどの山を歩いていても常にあって、自然との一体感のようなものを味わうと同時に、自分自身に還る感覚を体験し続けていた。それは、とても静かで自然なものだった。…

Áilegas

夏至の日の夜20時半を過ぎてから、一人でウツヨキのAiligas/Áilegasに登った。 登りはじめてすぐ、一頭のトナカイに遭遇した。程よい距離があったので、トナカイは逃げることはなかった。怖がらせないようなるべくゆっくり動いて、しばらくじっと静かに観察した。この時期に角があるということはおそらく雄トナカイで、もしかしたらKaldoaivi原生地域で放牧されている個体だったのかもしれない。 0:00 /0:33 1× 標高342mのAiligasも、上の方にはツンドラ地帯が広がっていて、ところどころに雪も残っていた。 遠くノルウェー方面の山はまだ雪に覆われていて白い。夜の太陽は雲に隠れていたが、それでもなお壮観な眺めだった。 おそらく天敵に襲われたのだと思われるトナカイの亡骸も目にした。この辺りでは、ウルヴァリンがトナカイを狩るらしい。主に狩られるのは、人間側の都合や勝手(経費や労力の削減、観光目的による管理等)によって本能や運動能力の発達を妨げられた“弱い”個体なのだと教えてもらった。…

Paistunturin erämaaへ

夏至の日には、トナカイ飼いでもあるTravel UtsjokiのPetraさんに案内してもらって、Paistunturi原生保護区(Paistunturin erämaa/Báišduoddara meahcceguovlu)の北東の端あたりの標識のないルートを歩いた。 4~5時間のハイキング中には、思っていた以上にたくさんのトナカイ(それも 5月に生まれたばかりの子トナカイと母親たち!)を目撃した。 0:00 /0:13 1× 今はちょうど、5月にKevo自然保護区(Kevon luonnonpuisto/Geavu luonddumeahcci)で子を産んだトナカイたちが、Paistunturiに戻ってくる時期らしい。子を連れた母トナカイたちは特に警戒心が強く、人間の存在を察知すると興味は示すものの、素早く離れていく。 0:00 /0:15 1× 0:00 /0:…

Kokkoを見にふたたびMantojärviへ

Travel UtsjokiのPetraさんには、私の身長にあうレンタルバイクの手配までしてもらった。夕食後、Mantojärviまでサイクリングに出かけることにした。 Utsjoki/Ohcejohka。何もかもが雄大なところ。そして、静かだ。 しかし、それにしても寒い。明日は夏至。…

ウツヨキのヴィレッジ・ホール“GIISÁ”

Travel UtsjokiのPetraさんの案内によるウツヨキとサーミの歴史、伝統、文化等を巡るツアーの最後に立ち寄ったのは、ウツヨキのヴィレッジ・ホールUtsjoen Kylätalo Giisá。入口にはもちろんサーミの旗が掲げられている。ここは、この地域に暮らす人たちの憩いや情報交換のためだけの場所ではなく、観光案内所も兼ねていて、旅人向けの情報や地図、本、お土産なども揃っている。 カフェで食べたkorvapuusti(シナモンロール)がとても美味しかった。 風が強くて寒いので、持参している薄手の帽子では不安になり、現地の人が手作りしたというサーミのパターンが編み込まれたニット帽を購入した。これで明日の標識のないルートを登るトレッキング(fellの上は吹きっ曝しで下界より更に冷えるらしい)にも事足りるはず。…

Past and present in Utsjoki village

Travel UtsjokiのPetraさんに案内してもらって、ウツヨキとサーミの歴史、地理、伝統、文化等を巡るツアーに出かけた。 2024年のトナカイ王(トナカイレースのチャンピオン)Kultalaの飼主でもあるPetraさんからは、多くのことを教えてもらった上に、私一人だけのプライベートツアーだったこともあって、たくさん質問をすることもできた。彼女は、先祖代々サーミのトナカイ飼いをされてきた方のパートナーであり、実際に数百頭のトナカイを飼いながら暮らしている。そんな彼女から、真摯な視点や率直な考えを聞くことができたのは貴重な機会であり、とても濃密で感慨深い3時間だった。 そして、私がウツヨキという地を認識するきっかけとなった、Harald Viggo Moltkeの絵の中に描かれたウツヨキ教会とログハウスにも来ることができた。夏至祭前日の今日は、夕方からこのMantojärvi湖畔でKokkoが焚かれる。…

Utsjoki/Ohcejohka

ウツヨキ(Utsjoki/Ohcejohka)は、空も、川も、山(英語では"fell"と呼ばれる)も、すべてがあまりに壮大で、写真に撮るのが難しい。ここは、イナリとは気配がまったく違っている。大きくて、広くて、とても静かだ。時の流れすら異るように感じられる。 0:00 /0:15 1× フィンランドとノルウェーの国境にもなっているテノ川(Tenojoki/Deatnu)に架かるサーミ橋まで歩いてみた。 イナリよりもさらに125 km北に位置するウツヨキは、EU最北の地域でもある。もちろんここでも太陽は一晩中沈むことはなく、22時を過ぎても、イナリで見たより高い位置にある。 夜22時半の気温は5℃。…