金輪際
金銭と不動産にまつわる母方の揉め事を長年眺めてきて、金も、不動産も、ある種の罠のようなものであり、それらに囚われるのは呪いのようなものだと感じていたが、父や父方の祖母の生前を振り返っても同じように感じる。彼らはみな、自らその罠に陥り、自ら呪いをかけて、そこに留まった。そして、わたしはそんな彼らの連鎖に巻き込まれたくなかったのだ。 父が生きていた頃から、わたしには相続放棄の一択しかないと考えていたが、実際に父が死に、これまでの経緯を改めて振り返って、やはりそれしかないと考えが定まった。そして、2022年10月に、父がかけてきた電話の内容に呆れて言葉を失い、「金輪際この人に関わってはならない」と静かに深く肚に落ちたことを思い出した。 家中の収納を服やモノで埋め尽くしていた母も、足の踏み場も無いほど大量のモノで溢れかえる家で暮らす伯母家族も、過去に自分が暴力をふるうなど酷い扱いをした妻のことを「それでも自分は彼女から愛されている」と言った母の重婚的内縁の夫も、みな寂しい人たちだった。実際に、母も母の内縁の夫も、死を前にして「寂しい」と漏らした。 彼らは自身の寂しさをモノや金や人で埋…