Atlantisの船に乗って
わたしたちが3年半前から住んでいるフラットがある建物には「Atlantis」という名が付いている。そのことに気づいたのは、ここへ引越してしばらく経ってからだった。 建物には、船や海、波を思わせるデザインがあちこちに施されている。わたしたちが住んでいるフラットも、いちばん広い部屋の壁がゆるくカーブを描いていて、東に向かう船の左舷と船首を彷彿とさせる。以前この場所には市場(ショッピングモールかな?)があったそうだが、それが焼失してしまった後、現在の「Atlantis」が新たに建てられたらしい。 わたしの母が他界した後、さくらをチェコへ連れてくると決めた直後に、Vがオンラインでこのフラットの情報を見つけた。わたしも彼も室内写真に強く惹かれ、すぐ彼に内見に出向いてもらった。当時、わたしは日本で死後事務と遺品整理、さくらの移住の準備を進めていた。そうしてわたしは、それまで一度も訪れたことのなかったこの街への引越しを決めた。わたしたちはそれよりも以前からいくつかの街で物件を探していたが、納得のいくフラットや家は見つからなかった。だからわたしは、さくらがこのフラットを引き寄せてくれたのだと思って…