記憶の中の風景

記憶の中の風景

13~4年ほど前に受けたヒプノセラピーの中で、「過去の記憶」として見た風景と場面を今でもよく覚えている。わたしはどうやら男性で、民族衣装のようなものを身につけ、小さな白い馬を連れて旅をしていた。そこは人の生活の気配などまったくない広大な荒野で、はるか彼方にはそれほど高くはない山稜が見えていた。

わたしが属する部族の間では、ある種の人々は定期的に生活の場(村)を離れ、一人で荒野に出て静寂を過ごさなければならないという伝統があった。それは、自然と一体化し、また自分自身に還るために必要な儀式だった。

自然にできたと思われる大きな岩の中の洞窟のような空間に横たわり、岩の隙間から見える夜空を見上げていた場面が特に印象に残っている。空には無数の星が輝いていた。自然と一体化し、自分自身に還るとは、星と繋がることでもあった。旅の友である白い馬は傍らで静かに佇んでいた。ただただ静かで安らかだった。

後になって、あれはいったいどこだったのだろうと思い、アメリカやカナダの荒野の写真を探してみたことがある。しかし、わたしが見たはるか遠くの山の稜線はそれほど高いものではなかった。今日になってふと、ラップランドの荒野はもしかしたらあの風景に似ているのかもしれないと思った。

ラップランドにも、人が中に横たわることができるほどの穴があいた巨石や岩があるか探してみたところ、わたしが訪ねてみようかと思っているInariの近くに「熊の巣穴」と呼ばれる巨岩があることがすぐにわかった。この熊の巣穴岩はフィンランド最大のタフォニ(風化穴)でもあるらしい。

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