2022年11月 日本滞在記 - 6

2022年11月 日本滞在記 - 6

日本滞在中に、10月から高齢者向け賃貸住宅に入居している実父を訪ねた。施設からも「相談・解決したいことがいくつかあるので一度来てもらいたい」という依頼を受けてのことだった。当日朝には担当のケアマネジャーさんからも連絡があり、彼女も同席することになった。

そこで初めて、父が8月に2度目の脳梗塞を発症して緊急入院していたと聞かされた。入院の際に必要な保証人が見つからなかったため、病院から地域包括支援センターに連絡が入り、そこで初めて現在のケアマネジャーさんが担当することになったそうだ。

わたしはケアマネジャーさんと施設の責任者の前で、わたしの幼少期に父が借金を作って行方不明になったことや、その後の両親の離婚、彼とは共に暮らした記憶もないこと、彼が(わたしの母に)養育費を支払ったこともないことなど、これまでの経緯を率直に話した。その上で、自分は彼の保証人や緊急連絡先にはなることはできないと伝えた。

さらに、彼には長らく別居中ではあるものの近くに住んでいる配偶者がいることも説明した。父は契約書類上の保証人欄にわたしの氏名と連絡先を書いていたが、施設の責任者はすぐに事情を理解して、契約書からわたしの名を削除し、わたしを保証人にはしないと約束してくれた。

そして、施設の責任者は父に、わたしがいる間に全員の目の前で配偶者に電話をし、彼女に緊急連絡先になってもらう同意を取るよう促した。父は、彼女には入院したことも引っ越したことも話していないようだったが、途中で施設の責任者が電話を替わって彼女に詳細を説明し、彼女は緊急連絡先になることには同意したようだった。

近くですべてを聴いていた施設のスタッフの女性から「あなたとお父さんとで(父の)配偶者を訪ねて『父のことをよろしくお願いします』と頭を下げておく方がいいのではないか」と言われたが、わたしはそれは違うと思いやんわりとスルーした。子が親をまるで自らの子にするように世話し、その責任を取るのは間違っているだろう。

わたしはケアマネジャーさんと施設の責任者には連絡先を伝えてあり、次に日本へ行く際には再訪するつもりでいる。すぐに必要だと言われた布団やシーツ、洗剤などの日用品も購入して届けた。父には、配偶者の方ときちんと対話をするよう促したが、彼が実際にどうするかは彼自身の選択と責任だ。

わたしは、自分とさくら以外の誰の責任も負うつもりはないし、その必要もない。親子としてではなく一個人同士としてできることはやるが、境界線ははっきりしている。別れ際、父は神妙な顔つきで「ありがとうな」と繰り返していた。わたしは、これまでにも同じような出来事ややり取りを何度も経てきたなと思った。

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