冬は光が少なくて
今日も空は分厚い雲に覆われていて、午前中ですら室内は薄暗く、絵を描くのが難しいほどだった。冬至を超えて徐々に日が長くなるとはいえ、ここではまだしばらくこんな風に薄暗い日々が続く。 光が少ない冬の間は絵を描くペースが落ちる。それでも、以前のように重い冬季鬱に陥ることはなくなっただけ随分ましだ。…
After the Rain, November (that place we walked together) Pastel on Pastelmat 30x40 cm…
昨日たまたま目に留まった漫画の中に、死神(と呼ばれる何か)を見た人たちの話があった。そして、そのコメント欄には、かなりの数の人から、死神の目撃体験に関する話が寄せられていた。興味深かったのは、どの体験談の中でも、死神は黒い服/スーツを着た男、あるいは黒い人(人影)として現れていたことだ。 私の母も、亡くなる少し前に「玄関に誰かが来ている」と何度か言っていた。彼女のベッドは玄関に直接面した広い居間にあった。実際には玄関には誰もいなかったが、彼女は何者かがやって来たのを感じ取っているようだった。今思えばあの時、どんな人がやって来たのかもう少し詳しく尋ねてみればよかったのかもしれない。 死神の目撃談の中で面白かったのは、死神もたまに人違いをするらしいという点だった。中には関西弁で「えらいすんません、間違えましたわ、ほな!」と消えていった死神もいて、思わず声を出して笑ってしまった。また、死神にも管轄移動があるらしいという目撃談もあり、案外社会的なんだなと感心した。 これらの死神目撃談についてVítに話していた時に、"man in blackで"はなく、"black man"と口について出…
母の看取りの最中の思い出はたくさんあるが、中でも特によく覚えていることがある。あの頃、母は既に固形物は食べられなくなっていて、時折私には見えない世界を見ているようだった。それでも彼女は好きな食べ物を思い出すのか、ぶどうを欲しがったので、私は彼女の口にほんの少しずつ果汁を運んだ。 すると、不意に彼女が宙を見つめながら「おかあちゃん、ぶどう、食べよ」と笑顔で言った。彼女が「おかあちゃん」という呼び方を使うのを聞いたのはそれが初めてだった。普段彼女は祖母のことを「母」とか「お母さん」と呼んでいたと思う。あれは、それまで見たことのなかった彼女の一面を垣間見た瞬間だった。 いつか私が死にゆく時にも、やっぱり懐かしい味、好きだった食べ物を思い出して、食べたくなるのだろうか。…
近所に住むRちゃんが、今日はミニお好み焼きを作って届けてくれた。具材は私の大好きなタコとイカ。おたふくソースと鰹節つき。美味しい。嬉しい。周期的に身体が最も辛くてしんどい時期に、好物を作ってくれる人が近くにいるなんて、私は幸運だ。 お好み焼きもまた、私にとっては懐かしい思い出を蘇らせる食べ物のひとつだ。母が生きていた頃は、実家に行くと毎回一度は必ずお好み焼きを作って食べたし、彼女が好きだったお好み焼き屋へ行くことも多かった。もっともっと昔、まだ父方の祖父が生きていた頃、銭湯の後にはよくその隣のお好み焼き屋に連れて行ってもらった。 懐かしい記憶が蘇るたびに、あの人たちはもういないこと、あれらの場所はもう無くなってしまったことを再確認し、まるですべて夢だったかのような感覚に陥る。ずっと長い夢を見ているようだ。Rちゃんが作ってくれたお好み焼きの余韻を味わいながら、そんなことを思っていた。きっと全部夢なんだろう。…
今朝目が覚める直前、大きな嘴を持った見たことのない鳥の雛が2羽、自宅の窓にやってくる夢を見た。2羽とも幼鳥とはいえかなり大きく、その身体はふわふわとしたダークグレーの羽で覆われていた。私は夢の中で、もしかしたらドードーの幼鳥かなと思っていた。 その後、別の窓(この時点で場所は見たこともない部屋に変わっていた)にはエンペラーペンギンが現れた。その隣には見たこともない大きな黒い鳥が立っていて、しかもその鳥は人間の言葉を喋るようだった。私はそのエンペラーペンギンと巨大な黒い鳥の写真を撮ろうとしていた。さくらもその場にいたように思う。 おもしろいことに、ほぼ同じ時間に、Vもまた、キングペンギンの雛が私たちの自宅の窓に来た夢を見ていたそうだ。…
近所に住むシンガポールから来たRちゃんとオンラインで長話をしていた。彼女と話していると、すっかり忘れていたことをよく思い出す。今日はなぜか話題がそのように運んで、私が過去にある場所で古神道を習っていたことや、キプロスのダスカロスについて話した。そして、当時の教本があることを思い出して、本棚から引っ張り出した。 彼女は私を「料理実験のモルモット」と呼んで、新しく試した手料理や、まとめて購入したアジア系食材のお裾分けをよく届けてくれる。それ以上に、彼女と話すと私はいつも元気をもらう。基本的に引きこもりで滅多に人と話すことのない私にとって、彼女は稀有でありがたい友人だ。 彼女と親しくなったきっかけは、さくらと彼女の犬が特別に仲が良かったことだった。彼女との縁は、さくらが齎してくれたギフトだ。…