見えないものを

見えているものを描きたいのではなく、見えないものを見えるものを通して創り出したいようで、描きながら壊れていくのだが、壊れることなく創り出すのは不可能なので、自分のパースペクティヴ(だと思っている境目)が壊れていくのは愉しい。 愉しいというか、それが当然なので、描いている最中は愉しいも嬉しいもなく、後からああこれは愉快だと気づく。対象が何かを呼び起こすから描くのではなく、呼び起こしたいものがあるから対象と画材を使ってそれを呼び寄せようとしている。…

シベリウス 交響曲第7番

友人から、シベリウスの交響曲第7番が演目のひとつとして予定されている公演のフライヤーに、絵か写真を提供してもらえないかという依頼を受けた。すぐに交響曲第7番を繰り返し聴き、これまでに描いた絵や撮った写真をすべて見返してみたが、これだ!と感じられるものが見つけられなかった(当然ながら写真も絵もチェコの風景が多く、これではシベリウスではなくスメタナになってしまう…と思った)。 そこで、曲を聴いているうちにイメージの中に広がっていく色彩、影と光を、新たに描いた。依頼を受けた時からそうする方がいいのはわかっていた。すばらしい音楽を聴いてその印象やイメージを絵に描くのは、新鮮で愉快だった。思いがけない機会をもらい、新たな境地を味わうことができた。…