2020‐08‐06 母を看取った後の日記
銀行関連の手続きを終えて、病院で手術前の診察を受けている母のパートナーを待つ間、城の近くの駐車場に車を停めて少し休憩した。アオスジアゲハの番がひらひら飛び回る様子を観察し、近づいてきた鳩やトンボに話しかけ、石垣の上で揺れる影絵を眺めていた。ほんの30分ほどだったが、心身が緩んで安らいだ。…
銀行関連の手続きを終えて、病院で手術前の診察を受けている母のパートナーを待つ間、城の近くの駐車場に車を停めて少し休憩した。アオスジアゲハの番がひらひら飛び回る様子を観察し、近づいてきた鳩やトンボに話しかけ、石垣の上で揺れる影絵を眺めていた。ほんの30分ほどだったが、心身が緩んで安らいだ。…
久しぶりに日本に滞在し、親の死とそれに纏わる出来事を体験する中で改めて感じるのは、この社会には、自立する個という概念がないということだ。「男/女である前に、親/子である前に、属性/立場/役割/肩書である前に、まず一個の人間としてわたしである」という感覚を持たないらしい人が本当に多い。 共感や連帯感への欲求がこれほどまでに強いのも、自己不在であるが故に、他者との間に明確な境界を持たないからではないか。多くの人が、自らの人生の当事者にはならないまま、誰かや何かとの関係だけに留まり、刷り込まれた思いに乗っ取られて、機械的な反応でしかない気分に動かされている。 人の”善意”にNOを言わないために、自分を含む誰かの”思い”を否定しないために、無自覚に自分(の肉体と感覚)を殺す習慣を繰り返してきた人は、自分の周囲にいる存在、特に自分より立場の弱い存在にも同じことを無自覚に強要する。この社会では、そうした自他への虐待の連鎖があらゆる関係の中で繰り返されている。…
母が亡くなった日から9日間が過ぎた。しかし、既にもっと長い時間を過ごした気がする。彼女を見送ったのはもう随分前のことのようだ。 とにかく毎日次から次へとやることが出てくる。銀行や保険の手続きだけでなく、電気、ガス、水道、電話、携帯電話、インターネット等々、あらゆる手続きに手間と労力がかかる。そして、その合間には当然ながら食事の準備や片付けもあるし、買い物にも行かねばならない。自分自身の快適さのためには掃除や洗濯もしたい。 今日は、朝から隣の市にある年金事務所へ母の年金手続きに出向いた(実家がある市の年金事務所は9月まで予約が取れなかったのだ)。その後、市役所で金融関連の手続きに必要な書類を取得し、帰宅した後は銀行、インターネットサービス会社、ガス会社と電話でやり取りをし、母が所有していた駐車場代の集金に出向いた。それだけで、気づけば日が暮れかけていた。 母と彼女のパートナーが内縁関係であるが故に、殆どの契約において、彼では名義変更も支払口座の変更もできず、毎回面倒な手順が必要となる。 母自身の希望は斎場での直葬だったが、彼女のパートナーと伯父家族との兼ね合いもあり、彼らを含む5…
この忙しい中でも、なるべくカメラ(アナログ、ピンホール)を持ち歩くようにはしているが、実家の周辺では写真を撮る気分にならない。大判カメラで極北の世界を撮ってきたある写真家は、日本にいるとどうも写真を撮る気にならないのだと言っていた。その感覚がわかる気もする。写真を撮るには、写真を撮るだけのための時間と状態が必要不可欠だ。…
買い物の途中、近くの廣峯神社へ出向いた。ここの展望室からは、姫路の街と瀬戸内海が一望できるのだが、生い茂る草木に眺めが覆われてしまっていた。以前は帰省するとよく一人でここへ来た。本殿からさらに山道を登って吉備神社と荒神社へ行くのが好きだった。母とも何度も一緒に来た場所だ。天祖父神社の辺りでは、いつものようにたくさんの揚羽蝶が飛び回っていた。…
朝早くから実父が電話をかけてきて早くに起こされたり、掃除の最中にまた唐突な弔問があったりと、今日もばたばたしているうちに一日が過ぎた。買い物に出た際、運転中に見た空と雲がはっきりと夏だった。どこか空が広くて、人があまりいないところへ出かけたい。余裕ができたら近場へドライブに行こう。…
ようやくからりと晴れたので、母が使っていたリネン類をすべて洗濯し、布団を干して、介護ベッドを消毒した。ベッド周りで彼女が使っていた細々としたものも片付けて、不要なものは整理した。日中にはやはり突然の弔問があり、その度にどうしても作業が中断される。 母の年金に関する手続きを進めるため、年金事務所に問い合わせたところ、市内の年金事務所は8月31日まで予約がいっぱいだという。わたしは8月後半には一旦チェコへ戻るつもりなので、それでは間に合わない。仕方なく、隣の市にある年金事務所の予約を取った。 午後には、母のために借りていた介護用品を返却し、母が癌治療を受けていた病院へ入院証明書を受け取りに行き、残っていた薬類を薬局で引き取ってもらった。そして、市役所へ出向いて、今後様々な手続きに必要な書類を取得し、認印を買いに行った。 今日もとにかくよく動いた。今やっと椅子に座ってご飯を食べている。週末は役所も銀行も閉まるので、各種手続きはしばし中断。ちょっとゆっくりできるだろうか。なるべく早くにやるべきことを片付けて、チェコへ一旦戻る前に、少しゆっくりと過ごせる時間が作れたらいいなと思う。…
親が亡くなると、やらなければならないことがとにかく多くて、葬儀が済んでからも休む暇がない。今日もまた一日中動き回っていた。今やっと椅子に座ってしばし休憩している。数々の手続きに加え、決めなければならないこと、出向かなければならない場所がまだまだいっぱいだ。母を看取る前からずーっと睡眠不足。…