自分を持つとは、自分の言葉を持つこと
ある人とのやり取りの中に「自分の考えや感覚を適切な言葉に変換するプロセスに時間がかかる」とあったので、言語化にも訓練が必要なのだと答えた。訓練とは、自分の感覚や感情にふさわしい言葉を探して選ぶだけでなく、自分の中の言葉のストックを増やすことも含まれている。アウトプットのためには、インプットが不可欠だ。 たとえば、もし「悲しい」という言葉を知らなければ、自分の中に痛いような辛いような苦しいような感覚が生じた時に、一体どのように表現すればいいだろうかと想像してみる。言語を習得していない乳幼児などはまさにその状態を体験しているのではないか。 そう考えると、わたしたちは言葉を習得することによって、自らの感覚や感情を認識するようになるとも言える。「悲しい」という言葉を知り、その言葉に対する共通認識を自分の感覚や感情にあてはめることによって、「わたしは今、悲しいのだ」と気づくことができる。 しかし、それは同時に、わたしたちは言葉にとらわれやすいということでもある。実際にはもしかすると他にもっとふさわしい言葉が見つかるかもしれない感覚を、「わたしは悲しい」と言葉にすることによって、「悲しい」と…