異界へと通じる裂け目
なんとなくまっすぐ家に帰りたくなくて、オフィスを出た時にちょうど目の前にやってきたトラムに飛び乗った。行く宛はなかったが、乗り込んだトラムが18番だったので、マラー・ストラナを通過し、マーネス橋を渡り、ヴルタヴァ川沿いを南下して国民劇場の角を曲がり、国民通りに着いたところで降車した。行き先は自宅やオフィスの周辺でなければどこでも良かった。とはいえ、観光客が集まるエリアや、洒落たレストランやバーが並ぶ賑やかな場所へは行きたくなかった。トラムの中で、明日が射手座の新月だということを思い出したので、国民通りから南南東へと広がるプラハの射手座エリアを歩くことにした。 トラムを降りたところでお腹がすいていることに気づいたので、何度か訪れたことのあるベトナム料理屋に入った。ベトナム料理屋ではいつも同じものを食べてしまいがちなので、たまには他のものを選ぼうとメニューを何度もひっくり返してみたものの、結局またいつもと同じものを注文した。数ヶ月前に訪ねた時とはメニューも、顔ぶれも、流れる音楽も違っていたので、対応してくれた店員に尋ねたところ、7月末に経営者が変わったらしい。出された料理もやはり、盛り…