詩力とは

写真でも、絵でも、文章でも、なんでもそうだが、現れるのは内側にあるもの、内側で生じたことだ。言葉による描写もまた、それを立ちのぼらせるための型である。短歌や詩は調香に似ている。香りは目には見えないが、嗅いだ者の中に様々な記憶を蘇らせる。そうして形のない瞬間の物語を生み出して、跡形もなく消えてしまう。記憶を呼び覚まし、情景を呼び起こすには、言葉も香りも選び抜かれる必要がある。あれもこれもと欲張ると、散漫で冗長になり、詩力を宿すことはできない。