「僕を殺してください」と言ったあの人も、「私を生んでください」と言ったあの人も、ただ帰りたかったんだろう。みんな、みんな、帰りたいだけ。でも、帰る場所がわからなくなっている。どこだったか忘れてしまって、すっかり帰れなくなっている。
わたしだってそうだった。ずっと、ずっと、帰りたいのに、帰る場所がどこにもなかった。どこかにあるものだと信じて、えんえんと探し続けていた。誰かの中に、社会の中に、世界の中に、きっとあると思っていた。でも、どこにもなかった。
たぶん、ずっと空を見ていればいいんじゃないかな。えんえんと星を見ていればいいんじゃないかな。自分の底が抜けるまで、ひたすらひたすら見ればいい。ぜんぶこぼれてしまうまで。わたしが消えてしまうまで。どこでもなくて、なんにもないところ。どこでもあって、なんにだってなれるところ。おかえりなさい。