爆破予告のために職場で避難指示が出た今日のこと
職場の入口に到着したとほぼ同時に、男性の声による全館放送が始まった。「爆弾を仕掛けたという通報があったため全員建物から出て避難するように」との指示だった。既に荷物をまとめていた他のスタッフとともに外へ出たら、付近には既に警察が到着していた。わたしの職場の周辺は複数の大学が集まるエリアなのだが、各大学施設にも同じように全員への避難勧告が出されたようだ。
大学施設の一部は既に入口が封鎖されて複数の警察が集まっていた。しかし、そのすぐそばでは、何人もの学生たちが「Dynamit, Dynamit(ダイナマイト、ダイナマイト)」と歌うチェコの有名なバンドの曲を流しながらお菓子を食べて集っていたのはおもしろかった。いかにもチェコという感じだ。
わたしたちは、時々ランチを食べに行くオフィスビルで事の成り行きをしばし待つことにした。もしかすると、予定よりも早く「爆弾はありませんでした」という発表がなされて、職場に戻れるかもしれないと思ったからだ。早めの昼食を食べた後は、カフェでミーティングやその場でできる仕事をしていた。しかし、どうやらやはり明日まで職場のある建物へは入館できないようだったので、14時頃に解散した。
せっかく日中に時間ができたので城の近辺へ写真でも撮りに行こうと思い、すぐにやってきたトラムに乗りこんだのだが、なぜかいつもとは行き先が違っている。何らかの事情で路線に変更が生じているようだった。発車前に慌てて降車し、次にやってきた別路線のトラムに乗りこもうとしたら、今度は運行中止で乗車できないという。どうやら今日はそういう日らしいと気持ちを切り替え、地下鉄に乗って街の中心部へフィルムを買いに行くことにした。
チェコで一番大きいカメラ店でフィルムを買い込み、さあどこで写真を撮ろうかなどと思いながら街を少し歩いてみたが、どうも頭がぼーっとして行き先が定まらない。なぜだかわからないけれど目もよく見えなくて、徐々に写真を撮る気力が失せてきた。そのうち小雨がぱらついてきたので、今日はもう何もしないことにして、いつも比較的客の少ない静かなカフェに入り、一時間ほどぼんやりと窓の外を眺めて過ごした。
わたしの視力はもともと低いけれど、今日はまるで世界のすべてに靄がかかっているようで、「見えにくい」というよりも「入ってこない」という感じがした。数日前から軽い神経痛と片頭痛があり、思考がまとまらない。とはいえ苦痛や他の不調はなく、ただ頭の中にうっすらと霧がかかっているような感覚が続いている。ここにいながらどこか別の世界や異なる次元を彷徨っているような感じだ。昨日の射手座新月に続き、今日は海王星が順行したなので、今はそういう時期なのだとあきらめた。
結局その後は、近くのレストランで夕飯を食べ、ビールを飲んで帰宅した。そこで初めて飲んだPoličkaという町にある醸造所の無濾過ビールが好みにあう味だったので、それだけで満足だった。ちょっと身体に疲労や不調を感じる時には、チェコビールを1~2杯飲むと楽になる。他の酒はほとんど飲まないし、飲みたくなることもないけれど、ビールだけは飲みたいと感じた時に素直に飲んでいる。
帰宅してからひとつ思い出したことがある。一昨日の朝、出勤準備の最中に突然、頭の中でトム・ジョーンズの『Sexbomb』が流れ出した。まともに聞いたこともないのに、サビの部分だけがぐるぐる回って、なぜまたこんな曲が?と不思議に思っていた。その現象は今朝も続いていて、そうして出勤したら、爆弾騒ぎでオフィスが封鎖されてしまった。なんだか駄洒落みたいな偶然だ。ちなみに、どうやらオフィスおよび周辺の大学施設からは爆弾は見つからなかったようだ。昨年夏にも同じような事件があったと聞いた。
このところ、こうしたちょっと奇妙な意識と現実のシンクロニシティが続いているので、明日にもまた何かおかしなことが起きるかもしれない。何が起きたところで、淡々とそれを受け入れて次へと行動するのみだが。