夢の中で、わたしは湖か大きな池のそばに暮らしていた。初夏の夕暮れ時で、水辺を囲む雑木林からは土と草木の匂いが色濃く漂っていた。わたしは近所に住む外国から来たカップルに「あそこと、あそこに、居心地のいいカフェがある」などと話していた。あたりは仄暗く、静かで、心地よかった。
カラーとモノクロームのあわいのような夢の景色や、匂い、感触を思い返していると、様々な記憶が蘇る。過去にどこかで味わった草むらの感触、木の葉の下で揺れる光と影、水や土や草木の香り。もしくは、誰かの写真や物語を通して見た風景。いくつもの記憶が蘇っては混ざり合う。そうして豊かな混沌となり、やがてふと新たな景色として現れる。それが、夢か現かはどうでもいい。すべてはわたしの中から生まれる物語なのだから。