鳩の幼鳥を救えなかった自らのやるせなさ
移民局がある駅を降りてすぐ、小さなふわふわとした灰色の塊がバスターミナルの歩道をよたよたと動いてはうずくまる様子が目に入った。それは鳩の幼鳥だった。まだ飛べないようだったので、もしかすると巣から落ちてしまったのかもしれない。よく見ると足の爪が既に傷んでいて、痛々しい姿だった。 どうしたものかと悩んだが、親鳥が助けにくるかもしれないと期待して一旦その場を離れた。しかし、移民局での用事を終えて駅に戻ると、幼鳥は同じ場所に佇んでいた。石畳の上を歩くのも困難なようで、よろよろと動いては躓き、うずくまる。人通りを怖れてか車道へと近づいていく幼鳥を、放ってはおけなかった。 わたしはVに頼んで、その地域を管轄する野生動物保護センターに電話をかけてもらった。電話では「その幼鳥を連れて帰ることはできるか」と尋ねられたようだが、Vが無理だと答えたところ、幼鳥を歩道の上ではなくどこか隠れたところに移動させるようにと指示された。彼らはなるべく早くその場へ向かうとのことだった。 Vが幼鳥を両手で掬い上げ、曲がり角に建つ少し死角になったビルの階段の屋根の上に載せた。わたしはペットボトルの蓋で水を与えてみたが…