テッド・チャン著『あなたの人生の物語』を読み終えた。
わたしが自らのUFO遭遇体験や、過去世のような夢を多々見てきたことや、未来を予見したかのような白昼夢やビジョンをいくつも体験してきたことを話した時に、それを聞いていたある人がこの小説を思い出した理由がわかった気がする。
表題作の中で描かれている世界は、わたしがしばしば抱いている感覚に近いものがあり、主人公には親近感すら抱いた。「まだ訪れていない未来を懐かしく思い出す」ようなあの感覚は実によくわかる。
わたしも地球上で肉体を持つ人間なので、当然ながら逐次的認識様式の中で暮らしているが、同時的認識様式を垣間見るような体験を幾度も味わっている。そのため、時は過去から未来に向かってではなく、未来から過去に向かって流れているように感じているし、過去も未来もすべての時は同時にある(あるいは時は円環である)のだろうと思っている。ただ、肉体がそれを認識できないだけのことだ。
この小説を読み始めて割とすぐに、J. L. ボルヘスの作品の世界に似ていると感じたが、実際にテッド・チャン自身が別の著書の中で、ボルヘスからの影響について書いているようだ。