自己同一化と投影

他者の言動や行為に対し、ほぼ機械的ともいえる否定感や強い感情反応がある時、それを「された」と思っている自分もまた、形は異なれど同じことを自分あるいは他者に対して「して」いる。

無自覚な被害者意識の裏には、無自覚な加害者意識がある。無自覚なまま(あるいは意図的に気づかぬふりをしたまま)被害者の立場にとどまり続ける人は、同時に、無自覚なまま自分や他者への加害も続けている。

我々は気を抜くとすぐ自己同一化しがちで、自分自身に幻想を見がちである。そうして自分に対して過剰な期待や願望を持ち、自分自身の暴力性や醜さからは目を背けたがる。しかし、内なる“認めたくない自分=影”は、他者を通して実現され続ける。強い否定や許せなさを感じる他者は、実は自分の中にいる。