終わらせるため

終わらせるため

わたしの父は、わたしがまだ幼かった頃に借金を残して失踪した。その後わたしは、彼と共に暮らしたこともないし、彼から養育費をもらったこともない(もちろん母は父と離婚し、わたしは母に育てられた)。その父がこの先亡くなった場合、遺骨をどうするのか、また、父方の墓が現在どのような状態にあるのか、そして唯一の子孫であるわたしにどのような責務が発生するのかについて、また調べ直している。

多系統萎縮症と認知症が進行して施設に入居している父とは、既に対話は望めない。また、父には再婚相手がいるが、彼との関わりを一切拒否しているらしい外国籍のその人がどこまで引き受けるつもりなのかもわからない。

父には成年後見人がついているので、その人に尋ねるしかない。彼女とはこれまでにも何度か電話で話をしてきて、わたしの相続放棄の意思も伝えてある。改めてまた彼女と連絡を取り、必要を感じた場合には、直接相談をしに日本へ行こうかと思いはじめている。

父に対しては、そもそも共に過ごした時間も僅かだし、この十数年ほどの間はできる限りの手助けもしてきたので、わたしにはもう思い残すことは一切ない。一人孫のわたしを可愛がってくれた祖母には感謝している。ただ、わたしに感情や思いがなくとも、戸籍上の子孫ではあるため、無視するだけでは片付かない(どころか場合によっては負債が生じる)事があり、面倒ではあるが、わたしにできることはきっちり終わらせたい。

何事も、始めたり、そのままにしておいたりするよりも、終わらせる方がはるかに面倒で大変である。いくらわたしが「終わらせに来た」とはいえ、母方・父方両家系からわたしにかけられた負荷はなかなかのものだと常々感じている。

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