もう一つ別の夢。
わたしはフランス在住の友人と二人で旅をしている最中で、トラムに乗り込んだ。トラムにしては車輌の中は妙に広く、白い内装に木の椅子やテーブルが並び、窓という窓に薄手の白いカーテンがかかっていた。わたしは長椅子のある広々とした座席を見つけ、ここならスーツケースも置けるよと友人を促して座った。
そこからどのように展開したかは覚えていないが、わたしは別の知人と共にトラムの中にいた。トラムはやけにゆっくりと進んでいて、わたしたちが向かう最終停留所まではまだ時間がかかるようだった。そこはプラハという設定だったが、地図に書かれた停留所はいずれも漢字名だった気がする。
知人は翌日日本へ向けて出発するようで、わたしは彼に「明日空港へ向かう時にもこのトラムの同じラインで行けるよ」と説明した。すると彼は「明日は友人たちとムハの前で待ち合わせている」と言う。わたしが「ムハ?」と問うと、彼は曖昧な説明を重ねた。わたしはそれが国立美術館のことだとわかった。彼は「あれ、国立美術館なんだ!」と驚いていた。
夢の中では、19~20世紀頃に建てられたような石造りの大きな建築物と、アルフォンス・ムハの『スラヴ叙事詩』らしき垂幕が浮かぶように見えていたが、実際にはそんな美術館も建物も存在しない。『スラヴ叙事詩』は現在は別の街で保管されているし、プラハには空港まで繋がるトラムも存在しない。
トラムの中では、わたしたちはブランケットや布団も持ち込んで、長椅子の上で横になっていた。やがて降りる停留所が近づいてきたので、布団やブランケットを畳みながら、わたしは「どうやってこんな大きなものを持ち込んだのだっけ?」と思っていた。半ば明晰夢のような夢だった。