目を覚ますと、伯母から「和ダンスの着物の整理はどうなった?」というショートメッセージが届いていた。わたしが日本に到着した直後から、彼女は何度か、わたしの母が遺した多くの着物の中から自分の娘に好きなものを選ばせてやってほしいと言ってきた。その度にわたしは「大量の遺品整理や事務手続きがある中、着物を出して広げてみせ、それからまた整理するのはあまりに大変なので、わたしが立ち去ったら好きなだけ選んで後は捨ててください」と答えた。
祖母の仏壇の処分についても、彼女はわたしに押し付けようとしてきた。わたしは「遺産分割も一切要求しないし、すべてを譲るので、祖母の代の仏壇の処分はあなたがたでやってください」と答えたが、そうすると彼女はまた、家も土地も既に自分たちのものだという主張を繰り返して、論点をずらそうとした。
建築費用も修繕費も半分以上を支払ってきた母と母のパートナーに対し、「この家の権利者はわたしたちだから早く出ていけ」と言い続けてきた彼女たちは、遺品の中から自分たちが欲しいものだけを残して、後の処分をわたしに押し付けようとし、人の時間と労力と金銭を搾取しようとする。
しかも、彼女たちは決して直接的には言葉にせず、自分たちにとって都合のいい言葉や返答を相手に言わせようとするから面倒だ。そして、自分たちにとって都合の悪い質問には、ニヤニヤ笑うだけで答えず、無視をする。
わたしが今回心身とも疲れ果てたのは、こういう人たちを相手にせざるを得なかったからだ。母の葬儀の際、彼女たちは花代も食事代も支払う素振りすらなく客人のように参列していたが、彼女たちの口から何かしら思いやりのある言葉を聞くことは一度もなかった。
以前からそういう人たちだとわかっていたので期待はないが、ここまで面倒だとさすがに嫌気がさす。母と母のパートナーが、さっさとあの家を出て別の場所で暮らしていてくれたなら、こんなにも大量の面倒な後始末が残ることもなかっただろうと思いもするが、彼らが死んでしまった今となってはどうしようもない。伯母たちだけでなく、母と母のパートナーもまた、あの家やモノと金に執着していたのは確かだ。
ようやくホテルに移動し、しばし一人で静かに休めると思っていた矢先にまたこんなことがあり、辟易している。しかし、あの家にまつわる“関係”にこれほどまで嫌なことしかないのは、わたしにとって「渡りに船」なのだろう。一切の未練なくすっぱり断って、すべて捨て去ることができる。
日曜日に、母と母のパートナーの遺影と、母のパートナーの遺骨(その日に彼の娘さんが埋葬する)を引き取りに行く。それで完全に終わりだ。もうわたしはあの家に二度と近づくことはない。
追記:この後、従弟(伯母の息子)からも面倒なメッセージが送られてきた。彼らは、司法書士に報酬を支払いたくないらしく、祖父母名義の土地の相続登記を自分たちでやろうとしているのだが、わたしにあれやこれやと依頼を送りつけては、無償でわたしを動かそうとする。わたしの戸籍謄本に加え、わたしの母の結婚から死亡までの連続した戸籍謄本の取得まで、当たり前のように求めてきたので、「あなた方が相続する土地に関する登記であり、それらはわたしが担うべきことではないので、司法書士に依頼してください」と返答した。