陰陽を脱するとは

日本にいると、相対的・社会的自我の範囲で闘っている人々に関わる機会が多い。チェコでの普段のわたしは、自覚的なアウトサイダーとして社会から距離を置いて暮らしているが、日本に来る時には、社会的枠組みの中で生きる人々と接する機会が増すからだろう。

そうした人々を眺めながら改めて実感したのは、何かを否定すればするほど、それをますます引き寄せる(創り出す)ということだ。自らの影に気づかずに、外側に見ている自身の投影を否定し、闘えば闘うほど、自分も世界も傷んで分離は深まる。

他者に対して生じる否定や嫌悪といった機械的反応の基は自分の中にある。それが自らの影だ。自分の影を認め、それを投影している対象もまとめて呑み込んで、自分を一回りも二回りも大きくしてしまえばいい。自身を統合する、つまり陰陽(相対性)から脱するとはそういうことだ。