47歳で絵を描きはじめて
有名無名を問わず様々なすばらしいアーティストの作品を見て、彼らの経歴を知ると、早い時期から美術/芸術の経験や教育を受けてきた人たちが思いのほか多いことに気づいた。そして、親からの虐待と支配の恐怖から逃れることだけで精一杯で、自分が何をしたいのかなど思う余裕すらなかった自らの過去を振り返ってちょっと悲しくなったりもしたが、それでもすべてこれで良かったと感じている。
というか、結局すべてなるようになっているのだ。もしもわたしが若い頃に絵を描いていたら、承認欲求や他者との比較に苦しんでいたかもしれない。自尊心を回復し、ようやく自分を生きはじめて、社会の中で実現したいことなどないことに気づき、現在の自分の状態とそれにみあった環境にいるからこそ、やっとわたしは絵を描きはじめたのだと思う。
上手く描けるようになるよりも、なるべく自由に描けるようになりたい。結局わたしにとっては絵そのものが目的ではなく、絵を描くことを通して自分の内外の宇宙を探索し、肉体的に死んだ後の地図や道筋を見つけたいのだ。そうして自分のための神話を作りたい。そう思うと、やはりこのタイミングでようやく絵を描くようになったのは当然のことだ。