この物質界では人間は二極化するのが常なので、何かを“善”にすれば、同時に“悪”が生じる。つまり、善も悪も個々が作り出している。そうして人は自ら“悪”を作り出しておきながら、その事実を受け入れようとはせずに否定し排除する。だから、その“悪”は他者を通じて具現化される。しかし、その他者は実は自分なのだ。
だが、人はそのことに気づきたくないので、“悪”を体現した他者だけを見て批判し否定する。そうして自己欺瞞と二極化を重ねていく。何かを嫌悪し、否定し、排除すればするほど、自分の内でも外でも二極化は深まっていく。二極化が深まるとは、“自分”を切り刻んで矮小化することであり、世界が小さくなることだ。
以前、ある人が「世の中の人がすべて〇〇〇だったらいいのに」というようなことを書いているのを見て、その人自身のそうした内的価値観が現実を作り出しているのだが、おそらく無自覚なんだなと思うことがあった。自らが否定し排除したがる自分自身の内にあるものが、他者を通して具現化されているだけである。