人形を助ける夢
夢の中で、大きな戸建住宅が建ち並ぶ通りを歩いていた。家屋と道路を隔てる塀の上を歩いていた気がする。ある家の玄関先の低い生垣の中に人形が横たわっていた。フェルトや布で作られたその人形は、明るい肌色と黄色い髪をもつ男の子で、赤と青が組み合わさったユニフォームのような服を着ていた。
薄汚れたその人形をよく見ると、鳩尾の辺りに少し血が滲んでいた。「怪我をしたの?助けが必要?」と話しかけると、人形は喋りはしなかったが、体の向きを変えて「うん、助けて」というような素振りを見せた。人形とは言語を介することなく、直接的な意思の疎通が可能だった。
わたしと人形のやり取りを見ていた通りすがりの女性が「あなた、人形と話ができるの?すごいね、いつもそうなの?」というようなことを尋ねてきたので、わたしは「よくあることですよ、特にチェコに来てからはこういうことは何度もありました。」という風に答えていた。
人形を助けることにしたものの、どのような処置をすればいいかわからないので、日本にいる内科医の友人に電話をかけた。彼はちょっと驚いてはいたものの「なんとかしてみよう、なんとかできるよ。」という風に明るく答えた。そこは海の近くで、電話で話をしながらわたしは波の音や湿った海風を感じていた。