随分前のことだが、ある友人の家でおもしろい体験をしたのを思い出した。
わたしはその日、彼女の家に泊まっていた。そうして二人で深夜まで話し込んでいたところ、不意に妙な気配を感じはじめた。見えない何かがそこにいる、あるいは室内を通り抜けていくように感じられた。怖くはなかったが、なんともいえない奇妙な雰囲気が漂っていた。
一体どこにその気配を感じるのか、二人で家の中を動き回って確認した。そして、どうも台所の窓から居間に向けて”何か”が流れこんでいるように感じられた。さらに互いの感覚を確認しあいながら観察しているうちに、”何か”が流れこんでいると感じられる先に、ある絵画が飾られていることに気づいた。
それは、彼女が好きなある有名な画家の絵だった。わたしたちは、どうやらその絵が、目には見えない”何か”が行き来するポータルになっているらしいと思った。そして、絵を裏返したか、何かで絵を覆ったと思う。あれは不思議と納得のいく発見だった。