子どもの頃はよく一人で架空の物語を作り、その絵を描いて遊んでいた。小学生になってからは、毎朝見ていたテレビ番組のマスコットキャラクターの絵を描いては送り、番組内で紹介されるのを楽しみにしていた。中学生の頃には、好きだった歌舞伎俳優や役柄の絵を描いて『演劇界』に投稿したりもしていた。思えばわたしは昔はよく絵を描いていた。
中学校では美術部に入部したものの、当時のわたしは支配的だった母親との関係に苦しんでいた上に、女子高特有の雰囲気に馴染めなくて周囲から攻撃を受けることも多く、ある日、美術用机にびっしりと悪口が書かれているのを見て、退部した。結局、美術部ではわたしは何一つ完成させることはなかった。
その後わたしはいつしか、「わたしには絵なんて描けない」と思いこむようになった。実際に、つい最近まで、なんとなく「わたしは絵を描くのは苦手、イラストどころか落書きも無理無理、さらっと絵が描ける人はすごいなあ」などと思っていた。
そんなわたしが、唐突にやってきた「色を使って絵を描きたい」という欲求に動かされて画材を購入した。まったく思いもよらない衝動と行動だった。「絵が描けない」と思いこんで封じ込めた自分を解放する機会なのかもしれない。上手く描こうとする必要はない。とにかくさまざまな色と遊んで楽しみたい。