夢の中で、わたしは垂直に近い傾斜を登っていた。でこぼこした赤土の急登を這うようにして登っていると、少し先にいた母方の祖母(実際の彼女とは異なっていた気がするが夢の中ではそう感じられた)がずるずると滑落してきて、彼女を受け止めたわたしも一緒に少し下方へ滑り落ちてしまった。
その後、別の場面でわたしは夜の住宅街にいた。町並みや雰囲気は実家がある地域に少し似ていた。わたしはまた祖母(やはり姿はぼんやりしていたが夢の中では彼女だと感じた)を連れて、大きな通りへ出る道を探していた。地図看板を確認したが、直感的に地図にはないルートがある気がしたので、確認するためにその方向へと走った。
夢の中では軽々と高速で走ることができ、息もまったくあがらなかった。振り返ると、祖母もわたしの背後について走っていた。彼女はまるで空中を滑るように移動していた気がする。わたしは「確認しに行くだけだから、あなたは無理して走らなくていいのに」と思った。そして、気づけばわたしたちは大通りに出ていた。
目が覚めた後、不意に、昨年実家で看取った母の最期の様子が蘇ってきた。痩せこけた彼女の顔や体、死にゆく人が放つ特有のにおい、彼女が息を引き取る直前に行った介護の作業内容、その際に感じた彼女の肉体の重さ、排泄物の色やにおいなどが、断片的なイメージとして浮かんでは流れていった。