3月3日はマルグリット・デュラスの命日だったようだ。20年以上気になっていたのに抵抗があって読めなかった『愛人/ラマン』を唐突に購入し、あっという間に読み終えた。無意識にわかってはいたけれど、そこには自分のことが書かれていた。だから長い間手をつけることができなかったのだ。
わたしは映画『愛人/ラマン』を観ていない。デュラス本人は映画が気に入らなかったそうだ(その後、彼女は『北の愛人』を書いている)。小説『愛人/ラマン』には、母親と兄の描写が思いのほか多かった。そして、デュラスもまた機能不全家族の中で生き延びた人だったことを知った。
小説を読むのは実に久しぶりだった。作者の創作を通して共振する深い記憶の感触をなぞり、物語を読みながら自分を発見していくという作業は、肉体からすんなり離脱できるだけの心身状態を要する。読書には時がある。そして、読むべき作品とは読むべき時に出逢える(再会できる)ようになっている。